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作品 - 20080422_382_2710p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


(むだい)、

  緋維

手の平からするすると逃げていく透明に輝く砂糖がある日とてつもなく愛おしく感じたのは決して嘘ではなく、
あるいはそれが(例えば悲しみを伴うものだったとしても)(例えば許しを乞うものだったとしても)(憎しみを促すものだったとしても)、

それは冬の太陽を感じさせる優しさでこの部屋を包み、
排水溝に渦巻く垢を撫ぜながら、
そしてすべての人類からあらゆる慈愛とを受けながらも、
反射してちらちらと輝くそれは、ゆっくり溶かしていきます、溶かしていきます、

色のないこの部屋に、
それだけが色を成すようで、
しかしその感覚は錯覚だということ、
それは悲しみではなく、
まして喜びでもなく、
するすると、ああ逃げていったと、そういった事実だけがぽおんと無造作に放り出され、
色のないこの部屋は、
相変わらず色を成さないまま、正確に時間を刻んでゆきます、

重ね合わせた両の手の、指と指の生むわずかな隙間から逃げていくそれは、まるでそうすることが一番良かったのだと、優しく囁くように風に消えました、
夢を見ることでしか生きられない少女に、一瞬の甘美な夢を与えながら、

肺に溜まった空気を
嘆きながら
じいん、と、吐き出すの、です 。

文学極道

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