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作品 - 20080304_687_2649p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


桜色のトンネルで

  はるらん



桜の花びらが
流れてゆきます
僕の町を 君の町を

明日のことなど思いもしないで
つくしの子は伸び始め
僕らはいま確かに歩いています
桜並木のトンネルを

花びらがこぼれてゆきます
僕と君が手を繋ぐ指と指のあいだに
ときおり風に揺れる君の髪にも

若い夫婦がベビーカーを押す
赤ちゃんの膝掛けの上にも
桜の花びら
ほろりほろり
落ちてゆきます

スニーカーの少女たちは
はしゃぎながら笑い転げ
ときおり立ち止まっては
グループの記念写真を撮り

おだやかな春の陽射しが
銀髪のご主人のブレザーの肩に
ご婦人のレモン色の
カーディガンの袖に降りそそいで

ああ
もうすぐ日が暮れますね

夕暮れの風のなか人はみな
桜並木のトンネルを折り返し
僕は何も言わずに君と
手を繋いで歩いています

道は桜色のビロードを敷きつめて
ベビーカーの赤ちゃんはもう眠りかけ

車椅子を押してくれる
息子を母親はときおり
振り返っては微笑み

夕暮れの風のなか
誰も帰ろうとはせずに

ああ
もうすぐ日が暮れますね

桜色の風が微笑む
幸せな日曜日
明日のことなど思いもしないで
つくしの子は伸び始め

花びらはこぼれてゆきます
桜色のビロードを
僕らは
流れてゆきます

桜色のトンネルを

文学極道

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