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作品 - 20080229_612_2635p

  • [優]  無題 - 凪葉  (2008-02)

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無題

  凪葉


もしも、溜め息の数だけ何かが失われていくとしたなら、それはきっと目の前に散らばっているお菓子の空袋なのかもしれない。
味もとくに意識することのないままただ人差し指と親指と、たまに中指を使ったりなんかして器用に口に運んでは歯を動かしているだけの、まるで機械のように、もくもくと目の前にちらつくテレビに目をいったりきたりさせている。

意味も無くおちょこでコカコーラをちびちびと飲んだりなんかしていても、部屋に散らばる衣服と、カチカチと一定を保ち続ける時計はいつだって何も話しかけてはくれない。
炬燵に入れた足がなかなか出せないままかれこれ何時間経ったのだろう。もうこのまま出られないかもしれない。
肩の重さを和らぐために肩を叩く姿のまま、ふいに立て掛けてある鏡と目があってしまいまたひとつ溢してしまった溜め息。
その中には何が含まれていたのだろうとくりかえしくりかえし考えていると時間ばかりが過ぎてしまい、ああこうして炬燵から出られないのだなと気がついて、苦笑した。

ひとつふたつみっつ、もうそろそろごみ箱が必要に、と思いながらまた別のことを考えてしまう悪い癖は相変わらず治りません。
ストーブを消して節約する気持ちだってあるのに、炬燵に入ったまま眠ってしまう癖も今のところ治りません。
眼鏡をはずしてぼやける視界のままいられたらどれだけ良いだろうか、いつか、そんなことを口ずさんだ人が、今、わたしになっています。更にぼやけていく世界に、瞳がついていけないと、嘆いている姿が、いつかの、そう、いつかの、、


目をとじて感じるせかいの温かさに爪先から覆われていきたいと思う。
雨音、混ざりあって消えていく時計の、子守唄と風のひそひそ話、炬燵の胎動が、脈々と、自動車の行き交う音に消されていく。その辺り、呼吸が届くくらいのところまできている。
溜め息の数を気にするのはもうやめないと。そろそろ、お湯を沸かして、湯たんぽに足を預けて、ひとつひとつ閉じていかないと、明日はお休みだから、そこらじゅうに染みついている何かを外に干して、パンパンってやさしく叩いて空へ送り届けるんだ、と思う。そういつだって、わたしは思うだけ。確実なことは無いから、いつだって思うことばかりを思ってしまう、悪い癖。

文学極道

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