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作品 - 20080228_581_2632p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ホオズキ笛

  黒沢




夜おそく
妻が購ってきた酸漿の花

市には露店がたち並び
ひとつの庇は
別の傾きへとさし換えられるようで
見ているそばで胸が苦しく
包装紙は
濡れていたという

私は食卓に持ち込まれた
黄色く
つましい明るみを
不思議な橋のように感じた



手のひらを
そっと打つのだが
果たしてどちらが鳴ったのだろう

兎に角ふるい設問なんだと
私は
既に萎れかけている花をはじき
化粧をおとす
耳飾を解いていく
ちがう時刻へと
通り抜ける
妻の気配を近くにしながら
くり返してみた




季節の変わり目は
いつも
何故だか俯いてしまう

酸漿は
花でなくなり
とても現に思えないのだが
紅く壊れやすい紡錘形
器用に中身を縒りだすことができると
いき返るから
妻がいう
私は応えなかった

次の市がひらく迄に
雨は降り止むのかも知れない

文学極道

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