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作品 - 20080212_267_2607p

  • [優]  1week - 榊 一威  (2008-02)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


1week

  榊 一威


鏡が割れた数だけ映す事象に 変わる形が付属したりする 誰かが退室する気配に空気が泳いだのを よく知っていた いつも群れて彷徨うデフォルトが 破片に現れ消えてゆく 瞳だけ開いた空洞の人形さえ 静かに濡れて佇んでいる コールサインを見落とした人が道の上に墜ちてゆく ゆったりとした音楽が耳の奥から聞こえる 括り付けられたオブジェに 一瞥してメインストリートに流れ出した とても最悪の日だ。


まだ遠い日のうちから覚えていた 蛍光灯の光に様々なモノが照らされている 今日は夢の端から食われてゆく 答案用紙に1マスずらして書き込んだ違和感がまとわりつく 書き込んだレスは少しも反映されていない 教会の扉を境界を越えてあけた誰かは影だけ残して去っていった さようなら 夢の人よ 隠れたつもりが 半分開いたドアから覗かれていて 急に光が強くなる そしてきっと忘れ合うんだろう ずっと。


過去形の次元で話すから困惑するのに 差し込まれたダイレクトメイルが暗号で伝達する サバイバルゲームのようなステージで 乱射された弾がどしゃぶりの雨となって戻ってくる 言葉は意味のない記号に加工され 紙面を飾り若者は虚ろな眼をして没頭している 気付かない 誰も気付かない 間違い探しに紛れ込んだ本物さえも 自分の存在を疑っている 乾いた風が砂と共に南から吹き付けてくる 何処にもない街。


昔沈んだ心の残響 揺れては引っかかり奏でられる 書きかけのノートブックに戦士達が跡を残し 堕ちてゆく 研いだパレットナイフの切っ先の緊張感に 血液がドクドクと脈打ち磔られる そんなとても静かな夜にカンバスは色を乗せ 残響と共に旅立って行く 屍を跳ね超えてきたプラットフォームが 集まったカンバスで一杯になる 教士達は次の基礎となって またディスプレイを汚し 隙間をぬって消されてゆく。


砕けた鉱物の欠片が錯綜した交差点で衝突し フォントはそのままで即興でそれを詩にしていく カチリカチリと時計の針がスロウペースで動いている 規則的な数列で表された譜を鉱物は確認し シグナルが赤にもかかわらず 詩人のために砕けてゆく 時間が過ぎるはやさに 追いつけなくなったヒカリ 思い出せば 連動であり 情動であり 胎動であった カットシーンで 歴史の動くはやさで 譜号のぶつかる速度で。


クラッシュされたレモンが 氷と溶け合ってダイヤのような水滴を作る時 カウチで寝ていた人形が目を覚ます 午前三時 街はずっと薙ぎ払われコンクリート1色になる 氷の溶ける音とユーモレスクのハミング以外何も聞こえない サインはゼロ HPも無いに等しい 柔らかい雨に打たれる 人形が少しずつ濡れてゆく 日々の近くで壊れていくことを初めから予言していた鳥が 大きく1回啼いて彼方へ飛んでいく時。


沈みかけの夕日に 現れる安らぎの危険信号 ノートブックは記号で一杯になり どこからか進化したデフォルトが ひっきりなしに消去していく 誰かがドロップスを花の代わりに配り それはどこかの葬列にまぎれ いつの間にか沈んでゆく 隙間のない声 少女が歌う声が 聞こえるか 記憶の底から湧き出る微かな声が いつも鳴っていた 少女の背中に翼が見える 鳥の羽が舞う 雨の空から掌へゆっくりと舞う。  

文学極道

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