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作品 - 20071228_348_2517p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


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  りす


未明、街中のマンホールの蓋が持ちあがって打ちあけ話をはじめる。
人々は眠っているので気の利いた相槌が打てない。その代わりに透
明な付箋(貼って剥がせる)を夢の中に飛ばして、告白を聞いたこ
との証明を立てる。そして朝、気持ちよく目覚めることができる。
(蓋を閉めるとき、手を挟まないでね)


 寝ることにも寝かされることにも疲れ
  読むことにも読まされることにも疲れ
   読み終えた小説のような枕を耳が嫌う
    蝋燭に手を翳して火を守る優しい人よ
     どうしても僕は風を捨てられないのだ
      Blackbirdを狙って寝具の陰で息を殺す


未明、佐々木は街中の鉄塔に名前を付けてまわる。鉄塔(遠藤)は、
鉄塔(渡辺)を、佐々木を介して知っている。鉄塔(渡辺)は、鉄
塔(川嶋)を、佐々木を介して知っている。佐々木(人間)は遠藤
を囲む高い鉄柵を乗り越えるために、今まさに冷たい手摺に手をか
けようとしている。鉄塔(渡辺)と鉄塔(川嶋)は、今夜は珍しく
佐々木が訪れないので、どうせ田中に登っているのだと考えている。
(お願い、登ったら、必ず降りてきてね)


 狙いが定まらない獲物はいつの時代も
  Blackbirdと呼び習わすのが僕達の夜だ
   翼を広げるとちょうど人間の大人位で
    翼をたたむとちょうど人間の子供位で
     つまり無責任な黒鳥が野放しになって
      僕達という未明を旋回している地と図


未明、街中の新聞配達が空き地に集まって三面記事を朗読している。
「業務上過失致死」という言葉が出てくるたびに、一人ずつヘルメ
ットを被る。全員がヘルメットを被り終えると、朝を迎えることが
できる。最後までヘルメットを被れなかった僕は、夜明けまでに明
日の三面記事をでっちあげなくてはならない。今日の安全運転の為。
(包丁で新聞を切り抜くのは、あまり上品じゃないね。)


 どうにかして未明の嘴をこじあけたい
  どうにかして栞を挟んで印をつけたい  
   犯行現場に戻ってくる佐々木のように
    枕の代わりに固いヘルメットを被って
     圧着した嘴の隙間に風を差し入れたい
      田中がそれを目撃すればそれで充分だ



未明、Blackbirdの雛が僕のベッドに迷い込んできた。雛の心に僕の
姿が刷り込まれて、雛の羽毛に僕の指がくすぐられて、僕はまだ、
疲れてなんかいないと、読みかけの小説があったことを思い出す。
未明、
 未明、
  未明、

          (鳥の羽なら、栞にうってつけじゃない。)

文学極道

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