#目次

最新情報


選出作品

作品 - 20071126_636_2459p

  • [優]   - りす  (2007-11)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  りす


浅い日暮れに 顔をあげて
低く飛ぶ鳥を 追っている部屋
星の来歴の微粒が 音もなく降り
手の届かない椅子に
遠近法を残していった


あかるい器に 居たことがある
うわぐすりを焼き付けた壁に
コツコツと爪を立てると
ときおり器が傾いて
人々がこぼれた


長いせせらぎの 持続がある
泣いた骨は乾くと 岸を転がる 
夜のある朝を 支度した目覚め
時間の撚糸で 編んだ心が
足場の悪い 林道を拓いて


秋に馴染んだころには
秋の話はしない
もみじ狩りから帰った人が
遠山に雪を見たと言う
椅子をすすめて お茶を淹れる


遠い空で私有の 星が破裂する
広がった空を 誰か横切る
最初の風が 走って消えた
ことしは麓も 色づきが早いと 
さらさらと枝が 目の前で揺すられ


編みあげたものに 袖を通す
鳥の背景で 夕日が潰れる
器の外には 座る人がいない
暗くなれば私の 母船は戻るだろう
こぼれた人々を 平らに積んで

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.