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作品 - 20071110_437_2444p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


夜の帳

  如月

行き交う車のヘッドライトが流れていく
川に流されている
小さな魚のように

遠ざかる
約束、と言う傷口に
そっと触れる街灯り

コンリートのビルは冷たく
けれど
かがり火のように優しく

*

道路工事の標識が立ち並び
夜警の赤いランプを
誘導員が揺らし始める

真夜中ではない真夜中で
労働が生み出す
白いため息が消えていく
そのほころびを結びつけて
私たちは満たされていくのです

煙突の煙が彼方
骨はここにはありません

*

光を帯びて散り敷かれた
夜の袖がはためく雲の隙間

願うすべを知らない
山々に消える
密かに響く鹿の鳴き声

ねんねこよ ねんねこよ

手のひらの中、
 母の歌を探しています

誰も知らない記憶の底で
誰も知らない秘密の歌を

*

いつもの公園を通りすぎる
相も変わらず人気はない

冬と呼ばれるお前が
そろそろ来る頃合いですか
枯れ葉はすでにつむじ風の仕草にまかれて去ってしまったよ

まつ毛をふるわせ
爪先まで染み渡る風に
ここが秋だとやっと知る

電灯で照らし出された木々が
音も無く
さやさやと揺れている

波打つ池は煌めいて
どこか海に似ていた

*

街のかがり火の向こう側
夜警の赤いランプが
 ゆらゆらと
真夜中ではない真夜中に
夜の帳が私へと開かれていく

ねんねこよ ねんねこよ

母の歌を探す手のひらに
やはりあの頃は見つからないから

せめて夢を、と願うのです

 指先でなぞるようにして

文学極道

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