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作品 - 20071024_900_2405p

  • [佳]  rebirth - 中村かほり  (2007-10)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


rebirth

  中村かほり

 群青だった、

子供たちが消滅してから
どのくらい時間が
たったのだろう

道端では精密な玩具が
なにかの目印のように
落ちていた
子供の手をはなれてもなお
ぬいぐるみは
人工的な愛想を
ふりまきつづけている

 群青だった、

わたしたちはそれらを
無言のままに回収し
街のはずれにある焼却炉へ
燃やしに行く

灰となったすべての玩具が
風にさらわれ
雨にうたれれば
消滅ははたされる

焼却炉からうまれた煙が
わたしたちの記憶を
撫でては流れていく

 群青だった、

街にはゆがみが生じ
それによってできたくぼみへ
落下するのを避けるため
わたしたちは消滅が起こるたび
身体構造を変えてゆかなければならない
消滅が起こりはじめたころにくらべると
わたしたちの身体は
ずいぶん簡単なものになった




そして
生殖器

わたしたちの身体は
ずいぶん簡単なものになった

 群青だった、

子供たちが消滅しても
はらみつづけていた女は存在したが
子宮のなかにあるものがなにかはわからず
みずから炎のなかに
飛び込んで行った

子供の消滅は
妊婦の消滅であり
妊婦の消滅は
母親の消滅であり
母親の消滅は
あらゆるものの消滅だった

精密な玩具を回収し終えたら
つぎに煙となるのは
わたしたちなのだろう

 群青だった、

あらゆるものが消滅するとき
この街は
血のにおいのする煙でつつまれる

わたしたちの煙のなかで
あたらしく
生まれるものがあるとすればそれは
より簡単な身体構造をもつ
わたしたちなのだろう

 群青だった、

こうして
わたしたちは再生しつづける
これが
進化なのか退化なのか
簡単な身体構造となった
わたしたちにはわからないが
再生する朝の色はいつも

 群青だった、

文学極道

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