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作品 - 20071017_618_2386p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


乾いてゆく風があった

  soft_machine


乾いてゆく風があった
薄れてゆく光もあった
綺麗にされた夏だった

目の前に拡がる
どこか懐かしい景色
なぜかふるい歌を思い出し
海に腕をさし入れる
かなしみが群れているのは
きっとあの雲を抜けたあたりで
のこされた魂も
そのすこし上あたりに舞っていて
よろこびがうまれたのもあのあたり

動きはじめた手足があった
赤ん坊を抱きかかえる友に
父親の顔というものを
はじめて見た気がした
世界を積み上げてゆく
欺かないことば
あまい息が陽に焼けてよりにおう
寝床にほおづえをついて見ている
ぼくのこのいくぶん打ち疲れた
心臓の音が聴こえているかい

波打つ草原をはしり
泡立つ都会でおよぐ
そこに生きる人達の
きっとくる明日を信じていたいから
空を眺めていると
ふと願わずにいられない
いつの日かこんなぼくを
感傷が成長してゆく輪にするだろう
それも罪から研ぎ出された
九月の影にうかされただけの
忘却に過ぎないものだとしても

静かに樹皮が冷えていった
穏やかに砂漠が拡がっていった
そして秋は今年つばさがなお空高い

文学極道

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