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作品 - 20071004_117_2366p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


自転車と彼女

  緋維


自転車で緩やかな一本坂を登る
足に力を込めてペダルをもう一漕ぎ、
一瞬 僕は世界のてっぺんに立つ
さらさらとした陽のひかりが、
或いは僕の腰に手を回す君の、
長い栗色の髪を、彩る

 疲れた?
 疲れるもんか。
 汗、かいてるよ。
 それでも、疲れるもんか。

勢いをつけて さらにもう一つ ペダルを漕いだ
世界中の風を集めて、
鮮やかに縁取られながら、
僕は走る
君の、きゃあ、という楽しそうな声を聞きながら、

 悪い癖だよ。
 なんだって?
 あなたの、悪い癖。

当然ながら坂は終わり、
自転車ごと横に倒れた
草原に無遠慮に身を投げ出して、
君は笑う
楽しそうに 心底
僕は、
君は、笑う

相変わらず陽のひかりは、さらさらと柔らかく、彼女の髪はくっきりと彩られ、
僕自身は何も動かず、
ただ、転がる一台の自転車だけが、僕をかたどる

文学極道

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