太陽が隠れ、雨が降っている。
駅から、歩いて帰る途中、
だれもいない、
公園による。
幼いころ、よく公園で待たされた。
雨が降っていても、
寒さで凍えながら、
靴の中が水で濡れても、
汚れた指先で、
小石をつかみ、
地面に落書きをした、
なびく、たてがみの、
いっとうの馬。
公園のそばにある、
ソロバン塾には、
わたしの指を逆にそらせ、
手の甲につけては、
喜ぶ上級生たちがいた。
いつも、塾の授業が終わるまで、
わたしを、待たせている。
雨がひどくなれば、
塾ののきで、
水のはった地面を眺める。
いつまでも雨が、
降っていてくれれば、と。
塾の先生が心配して、
顔をだし、声をかけてくれても、
わたしは黙って、首をふり、
あいまいに微笑むだけ。
濡れた前髪からは、
しずくが落ちる。
足元の、
水たまりに映る、
空が小さくゆれる。
冷たい空気の中でも、
ひとりで笑っていた。
スーツの上の、
コートのすそを気にしながら、
公園の中に、
しゃがみこみ、
濡れた傘を肩にかけながら、
地面に小石で、
落書きをして遊んでいる、
わたしは、無力な子どものようで、
いつまでも、
だれもこないことを祈っている。
それでも、
あの雨雲の上は、
晴れているはずで、
羽根を付け足し、
地面の、
ペガサスが、
太陽に向けて駆けのぼる。
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選出作品
作品 - 20070917_697_2330p
- [優] ペガサス - みつとみ (2007-09)
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ペガサス
みつとみ