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作品 - 20070810_024_2263p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


火災現場からのレポート

  狩心

ニュースでやってた
どうやら、隕石が衝突したらしい
隕石の中からはたぶんエイリアンが出てくるはずだよ
あーあーあー、マイクマイク、テストテスト
壊れた腕時計を見ると、時刻は午前二時(深夜)、しかし!
私の意識は、暗闇が影の中にひっそりと身を潜めた明け方の朝なので、服を全部脱ぐ
風呂場
あーあ、いい湯だな〜、梅酒のんで〜、生ハム&チーズ、けけけ、の最中にシャワーの穴から、誰かの悲鳴が聞こえてきた、
シャワーを受話器のようにして、もしもし、もしもし、大丈夫ですか?、と語りかけてみたが、返答がない、
鏡に映る自分の姿を見て、いや、むしろ、俺が大丈夫か?、と自分を疑った、
丸裸でこんな
303号室
日当たりは抜群なんだけど それはむしろ 吸血鬼にとっては不都合で
左右対称の部屋 美しすぎて 逆に疲れてくるので ここから抜け出す事にする
腕時計が チッチ チッチ 舌打ちして 憂鬱なムード
そんな空間を漂い 時間に囲まれる前に 二足歩行で ここから抜け出そう
壁も天井も床もミシミシ いっている (いや、四足歩行でもいいけど)
私の影の足跡もミシミシ いっている (いや、二人三脚でもいいけど)
それに加えて今日は、プスプス いっている
ドアノブが熱い、皮膚が付着して、片手が焼け爛れて、
じゅーじゅー、じゅーじゅー、ぎゃーぎゃー、ぎゃーぎゃー、
利き腕が機能しなくなってもいいや、ここから抜け出そう!
廊下
切断された利き腕から、血がポタリポタリとリズムよく落下するんですけど、
火事を知らせる緊急警報がピーピーうるさいので、
部屋の前のドアには、住人たちの削ぎ落とされた耳が転がっているので、
ああ、そうですか、そういう事ですかと、全て一人で納得する廊下
そして そこから見える沢山の部屋の中はー
炎の渦ですー 温度は最悪に上昇 地獄ですかここは。
生身の体を持った者たちがキャーキャー言いながら焼失していく中で
機械化された者たちがウィーンウィーン言いながら余裕かまして
テレビを見たり、ゲームをしたり、音楽を聴きながら踊っている、ポテトチップス
袋詰で売られている、情報の世界で首を180度うしろにひん曲げて笑顔
妖怪のように舌を伸ばして、口だけで呼吸、舌が体に絡みつく
体がネジのようにねじれ始めて、建物の骨組みに打ち付けられる
トンカチの音と共に裁判にかけられて、自殺未遂容疑で実刑判決、キリストの張り付け
火はどんどんと燃え広がっていく廊下 そしてそこにある沢山の部屋
丸焼けになった死体がどんどん出現してきて 廊下 はきだめになる
食欲をそそるステーキの匂いが充満し始める 廊下 はきだめになる
ナイフで切られた肉の断面は丁度いい赤さで 一時的な生の躍動かな? 幻覚です
得体の知れない変な汁がじゅるじゅる出てる 老化現象かも しれません
滴る液体を全て吸い尽くす吸血鬼のおっさんは私です 光速で若返ります
302号室
隣の人は生きているのか
インターフォンを鳴らす
返事さえ返ってこない
立ち尽くす私の顔は 顔面漂白剤 立ち尽くす私の顔は 顔面漂白剤 撮影中 生本番!
顔の皮膚がボロボロと剥がれ落ちる ヤバイ ワタシガ エイリアンダト バレテシマウ
身近な人間同士で言葉が通じない 身近な人間同士でエイリアンごっこ 身近な人間同士で極秘スパイ大作戦 身近な人間同士で政治的な侵略
非常階段
上か下か迷うけど
とりあえずのぼれ
それが人だ
助かるか助からないか
そんなのは二の次だ
とりあえずのぼれ
なんていう声が聞こえてきて、半ば強制的に体を動かしました、先生! 竹槍を持ってぼくぁ、宇宙人に立ち向かいます、ぼくぁヒーローなんです、先生、ヒーローは世界と愛する人とどっちを助けるんですか? 愛する人よりも世界の方が大切ですか? せんせい・・・走って逃げた ばかやろう 頼りにならない先生 でも ありがとう!
屋上
満天の星空だ イェーイ ☆ しかし誰もいない、うそーん
みんな逃げるのに精一杯なんだろう
リモコンボタンでポチッと夕焼けに変更 ポチッと雨上がりの快晴で虹が架かる!
ポチッと南国の浜辺 ポチッと火星人襲来 ポチッと地球の危機に変更 そして、
落下してくる隕石たちが、この町に降り注ぎ、建物を破壊し、火の手を揚げ始める
ヘリポート
防火服を着た連中が空から降ってくる
手には銃を持っていて 射殺
顔は一様にガスマスクで 大気汚染
戦争でも始めるつもりだろうか
真上を轟音と共に戦闘機が走り抜けていき
ミサイルを発射して隕石を粉々に粉砕している 干渉の嵐
飛び散った破片が雨となって
町の舗装された道路に突き刺さっていく 感傷の嵐
それを踏み潰していく戦車に乗っているのは赤ちゃん
親を探しに遥か外国まで行くその姿は、熱狂的な支持を受けてアニメ化に至る
エレベーター
私は降りていく
自動で動かないエレベーターを手動で動かせ
屋上から、9、8、7、6、5、エレベーターを止めて誤解で降りろ
誤解の廊下は目が痛くなる位、煙が充満しているので
コミュニケーションはいつも誤解から始まる
506号室
人の声がする
ドアを開けたらバックドラフトで全身火だるま
私は黒い影
悪魔の化身
血も肉もない骸骨戦士
私の姿を見て
小さな子供は悲鳴を上げながら
ベランダから身を投げた
そんなつもりじゃなかった
壁をすり抜けて
505号室
有毒ガスを吸い込んで
体、動かなくなった老人と
手を繋いで
螺旋階段
スキップで駆け下りる
言葉なんていらない
二人は災害の中
共通の体験
老人と合体して
あなたの死に耳を傾ける
104号室 204号室 304号室
ドアのない部屋もあるらしい
私は黒い影
悪魔の化身
壁をすり抜けて
404号室 504号室 604号室
終わらないアパートで
存在しない部屋を求めて

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