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作品 - 20070707_854_2184p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ウィンターランド

  軽谷佑子

まどの向こうに降る雨をみている
だけならとても好きなんだけど実
際に外へ出て雨に濡れるのはいや
なのだとあのひとは言って皿に残
るソースの染みをみつめていたの
でした

夏の木の緑をずっとおぼえていた
ので力だけはうしなわずにここま
で来ることができたのだと思いま
すわたしは引き返せないたくさん
の時間をずっととてもちいさなこ
とに使いつづけていてそれはとっ
ても楽しかった

明けがたにセミが鳴きだすのはい
つもきまって午前四時十七分あの
ときはいつも目が覚めていたので
鳴きごえはすべて理解できて手あ
たりしだいにつめこんでいました

ビルとビルのあいだにみえるちい
さな夜空が好きでたばこを吸うあ
のひとに言ったらそれはめずらし
いみかたをするね空はいつでも広
いものだといわれてそうかしらん
と首をかしげたあのひとは海王星
に行って死ぬ

綿の木をそだてていたときに裏の
日あたりがわるいところで植木鉢
のプラスチックの白さがいつも湿
気ていたのをおぼえていますあの
ときはとても暖かかったけれど綿
の木はそだたなかった

いまは冬の国に住んでいてここは
庭なんの心配もなくスカートをひ
ろげて座っていると空からたくさ
んの冬が降ってきて髪の毛や腕を
おおいわたしは地面とかわらなく
なります

文学極道

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