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作品 - 20070605_857_2114p

  • [優]   - りす  (2007-06)

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  りす

月あかりを踏んでも
つまさきは冷たく
閉めわすれた窓に
あとすこし 手が届かない
またひとつ 星を噛み砕いた犬が
青い光を零しながら路地の
ほそながい暗がりを横切る
あした あのあたりで あなたは
冷めた星の破片を拾うだろう、そんな
うそをつく
あいてもなく
すきま風が膝を撫でて
かたい骨からなにか一本
抜いていった


ふしぎと猫が寄りつかない庭で
ひるま 鉄砲ゆりが咲いた
三番目の来客は
煙草を吸っていった
ゆりの株をわけてほしいと
乾いた土を掘り返す背中に
根は洗わないようにと 言おうとして
どこにでも咲く花だと 言っていた
煙草と土の匂いが庭を渡り
またひとつ 
まぶしいだけの 午後をかぞえた


名刺を畳んで青銅の
灰皿へ放り込むと 
ゆっくり
かぶった灰を押しのけながら
はじめの 
かたちへと 
戻ろうとする 
うごくので
燃やそうと
火をつけて 
ふと
生まれかわりたいと
おもった


一番目の来客は 
白い箱を置いていった
つまらない箱だと言いながら
置いていった
この箱を開けるにはどこから
破りはじめればよいか
四隅が とても似ている
四隅を 鼻の先でさわる
いちばん痛かった角をつぶして
きょうの目印にして
戸棚の奥に仕舞いこむとうしろで 
廊下をさすらってきたあなたが
降ってきたよと
窓を閉めていった

文学極道

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