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作品 - 20070531_726_2100p

  • [佳]    - やぶさか  (2007-05)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


 

  やぶさか

 城/だった

 ひらがなにあふれて・
 うなだれた、ふたつの視線の
 はぐらかされて、ふと
 立ちどまった先

 *

 波うちぎわに
 ロウソクを立てる、いくつか
 ぼくと、足あとの、離されていくから
 針と、糸が/必要だった

 *

 上質さについて
 虎を思うとき・
 それぞれのサバンナに触れて
 針を刺していかなければならなかった

 *

 ヒンデンブルグは堕ちた
 紙面の上、砂をまいて
 香るのだという・
 ぼやのように、ふと
 早朝

 *

 刺すなら
 右のほうからにしてほしい」
 きみはささやいた・
 ひらかれたドアの先を見て、ぼくは
 ゆれながら、傾いていた

 *

 右のほうには
 まず、何もないから」と
 きみの輪郭は
 ぼくと重なりたいのだった

 *

 海はいま
 一枚の紙きれだから
 あぶなく、鋭いんだ」

 *

 影が
 きらきらと、宝石を追って
 サバンナを走っている

 *

 猿の目
 いつだって静かだった
 殺すために、しずかだった

 *

 ぼくは閉じられて
 きみと、猿について/針と、糸を手に

 *

 一分は/きざまれた
 城の、脆さと
 
 失明していくときの
 一分と・

文学極道

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