城/だった
ひらがなにあふれて・
うなだれた、ふたつの視線の
はぐらかされて、ふと
立ちどまった先
*
波うちぎわに
ロウソクを立てる、いくつか
ぼくと、足あとの、離されていくから
針と、糸が/必要だった
*
上質さについて
虎を思うとき・
それぞれのサバンナに触れて
針を刺していかなければならなかった
*
ヒンデンブルグは堕ちた
紙面の上、砂をまいて
香るのだという・
ぼやのように、ふと
早朝
*
刺すなら
右のほうからにしてほしい」
きみはささやいた・
ひらかれたドアの先を見て、ぼくは
ゆれながら、傾いていた
*
右のほうには
まず、何もないから」と
きみの輪郭は
ぼくと重なりたいのだった
*
海はいま
一枚の紙きれだから
あぶなく、鋭いんだ」
*
影が
きらきらと、宝石を追って
サバンナを走っている
*
猿の目
いつだって静かだった
殺すために、しずかだった
*
ぼくは閉じられて
きみと、猿について/針と、糸を手に
*
一分は/きざまれた
城の、脆さと
失明していくときの
一分と・
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