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やぶさか

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

  • [佳]  解体  (2007-04)
  • [佳]     (2007-05)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


解体

  やぶさか

 手首から/せりだす骨に
 ふれる/針先の危うさのうえ――天秤は/天体をめぐる/
 ぜんまいのように/きりきりと
 自転している

 鼓膜にあいた/ちいさな穴から
 茎をのばす/花をたどれば
 ふじ棚は――香りだかく/光る/ねずみの四肢をつなぎ
 わたしは/沈黙の更紗は
 
 ひとえに/
 たそがれた命の/あまさの/苦しみの/くだる/曲線をなぞる

   それがわたしの駆けていく音だと
   無言のうちに/鳥は/影は

 指さきの/神々しさに/おびえる/
 こぼれそうなわたしに
 まぶたは
 まだ。おろされない


 

  やぶさか

 城/だった

 ひらがなにあふれて・
 うなだれた、ふたつの視線の
 はぐらかされて、ふと
 立ちどまった先

 *

 波うちぎわに
 ロウソクを立てる、いくつか
 ぼくと、足あとの、離されていくから
 針と、糸が/必要だった

 *

 上質さについて
 虎を思うとき・
 それぞれのサバンナに触れて
 針を刺していかなければならなかった

 *

 ヒンデンブルグは堕ちた
 紙面の上、砂をまいて
 香るのだという・
 ぼやのように、ふと
 早朝

 *

 刺すなら
 右のほうからにしてほしい」
 きみはささやいた・
 ひらかれたドアの先を見て、ぼくは
 ゆれながら、傾いていた

 *

 右のほうには
 まず、何もないから」と
 きみの輪郭は
 ぼくと重なりたいのだった

 *

 海はいま
 一枚の紙きれだから
 あぶなく、鋭いんだ」

 *

 影が
 きらきらと、宝石を追って
 サバンナを走っている

 *

 猿の目
 いつだって静かだった
 殺すために、しずかだった

 *

 ぼくは閉じられて
 きみと、猿について/針と、糸を手に

 *

 一分は/きざまれた
 城の、脆さと
 
 失明していくときの
 一分と・

文学極道

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