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作品 - 20070521_480_2078p

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おっちゃんの詩

  シンジロウ


おっちゃんの人生は
大正区のある家で終わった
警察は当初 殺人の疑いを
おばちゃんに持っていた
いや それはただの事務的な手続き
だれも おっちゃんは殺されたんやと
怒ってくれなかった
たとえ事故でも

正直俺も悲しくもなんともなかった
だけどおっちゃん
あんたは女に惚れたことがあったか?
あんたは女に惚れられたことはあったか?
女の本当の媚態を見たか?
女を本気で抱いたか?
たぶんおっちゃんはそのどれも出来なかった
だってシャイだったから
そんなことが出来るほど
おっちゃんは図々しくなかったもんね

おっちゃん
おっちゃんが買ってくれた寿司
旨かった・・・たぶん
おっちゃん
「おっちゃんこんな人間やさかい」って
俺はあのとき おっちゃんが何を言っているのか
わからなかった

なあ おっちゃん
今は俺の胸にちょっとだけ おっちゃんがいる
おっちゃんのせいで
悲しいもんがちょっとだけな

文学極道

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