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作品 - 20070502_048_2038p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


すみれレイン

  キメラ

遠ざかった
昼過ぎの暑さきびしく
伸びやかにあれど迫り来る
車輪きえず
心すれ違い赦すことばかりが増え
いつしか
灰色が世界の四季だと知る

なんのいみもなくて
かざぐるまのように
力無き部品を彩る自動車の加速
国道から海沿いの辺鄙に
船の博物館があった
蒸し暑い9月の熱風
揺ら揺らとあの世とこの世を遊ぶ
勤務時間内だし抜け
人影もまばらな博物館は
まるで死への入り口のようだった

ここをでたらおわらせよう
ここで終らせる

おびただしい
すみれの雨がふる
虚妄色した喜劇どものパントマイム
根付いたものを愛した幼少
ふと船幽霊の文献に目がとまる
目がはしる
さいごの興味は質素な海の話
食い入るように博物館を覚える

だれもしらない午後の
だれもしらない絶望
だれも
息をすい
空中に冷気パラパラ綺麗


ぼくだけの雨は
すみれレイン

いま解ったよ
うまれたときから
そとは晴れていたんだ

文学極道

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