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作品 - 20070301_548_1880p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


雨の日のおむかえ

  ふる

雨が降っている。俺はぼんやりと窓の外を見ていた。

俺は雨が好きだ。雨が降ると世界が小さくなる。

世界はこの部屋だけになる。

俺が見ている場所に、空から宇宙船が降りてきた。

宇宙船は駐車場に降りた。車四台分くらいの大きさ。

俺は窓からその光景を見ている。

宇宙船の扉が開き、中から小柄な宇宙人が出てきた。

宇宙人は茶色い肌に赤い斑点が全身を覆う、醜い生き物だった。服は着てない。

近くにいた人たちは叫びながら逃げ惑い、大騒ぎ。

俺は自室でコーヒーを飲みながらその光景を見ている。

そのうち警察が来てあたりを包囲した。

宇宙船から出てきた宇宙人は、ただ突っ立っているだけ。

警察がスピーカーから呼びかけるが何の反応も示さない。

自衛隊も駆けつけてきた。

野次馬が集まり、テレビカメラもきた。

俺は、ふうとため息をつき、窓を開けた。

俺の体は宙に浮かび、窓から出て、空気の上をゆっくりと歩いた。

野次馬や自衛隊やゾウやライオンやキリンたちを見下ろしながら、俺は宇宙人の方に近付いた。

宇宙人は俺を認めると、茶色に赤い斑点のある細い腕を俺の方に差し出した。

俺はその腕を握り、地上に降りた。

周りから、わあと歓声が上がった。中には泣いている人もいる。

俺は宇宙人に「遅かったな」といい、人間のマスクを剥いだ。

人間のマスクの下から、四つの大きな赤い目と猛獣のような巨大な口が出てきた。

大衆は、おおと歓声を上げた。

俺は宇宙船に乗り込んだ。

宇宙人も俺のあとに続いた。宇宙船の扉が閉まる。

宇宙船がゆっくりと浮上する。俺は宇宙船の窓から雨に濡れた人々を見下ろした。

俺は雨が好きだ。

雨が降ると、世界が小さくなる。

文学極道

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