雨が降っている。俺はぼんやりと窓の外を見ていた。
俺は雨が好きだ。雨が降ると世界が小さくなる。
世界はこの部屋だけになる。
俺が見ている場所に、空から宇宙船が降りてきた。
宇宙船は駐車場に降りた。車四台分くらいの大きさ。
俺は窓からその光景を見ている。
宇宙船の扉が開き、中から小柄な宇宙人が出てきた。
宇宙人は茶色い肌に赤い斑点が全身を覆う、醜い生き物だった。服は着てない。
近くにいた人たちは叫びながら逃げ惑い、大騒ぎ。
俺は自室でコーヒーを飲みながらその光景を見ている。
そのうち警察が来てあたりを包囲した。
宇宙船から出てきた宇宙人は、ただ突っ立っているだけ。
警察がスピーカーから呼びかけるが何の反応も示さない。
自衛隊も駆けつけてきた。
野次馬が集まり、テレビカメラもきた。
俺は、ふうとため息をつき、窓を開けた。
俺の体は宙に浮かび、窓から出て、空気の上をゆっくりと歩いた。
野次馬や自衛隊やゾウやライオンやキリンたちを見下ろしながら、俺は宇宙人の方に近付いた。
宇宙人は俺を認めると、茶色に赤い斑点のある細い腕を俺の方に差し出した。
俺はその腕を握り、地上に降りた。
周りから、わあと歓声が上がった。中には泣いている人もいる。
俺は宇宙人に「遅かったな」といい、人間のマスクを剥いだ。
人間のマスクの下から、四つの大きな赤い目と猛獣のような巨大な口が出てきた。
大衆は、おおと歓声を上げた。
俺は宇宙船に乗り込んだ。
宇宙人も俺のあとに続いた。宇宙船の扉が閉まる。
宇宙船がゆっくりと浮上する。俺は宇宙船の窓から雨に濡れた人々を見下ろした。
俺は雨が好きだ。
雨が降ると、世界が小さくなる。
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作品 - 20070301_548_1880p
- [佳] 雨の日のおむかえ - ふる (2007-03)
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雨の日のおむかえ
ふる