二月十三日、
雪が降るのを、
自室で待つ。
母から贈られた、
防寒コートをきて、
窓の向こうから、
薄い光がさしている。
コートの上に、
毛布をかぶり、
書いたばかりの、
自分の手紙を読み返す。
ひとりで、
グラスについだ、
リキュールを飲む。
冷めた空気が、
わたしをつつみこんでいく。
十年前、
わたしの上に、
降り注いだ雪は、
決して美しいだけの、
冬の情景ではなかったが、
ハクレンガの屋上から、
地平につもる雪を、
震えながら、
見つめつづけていた、
二十歳の誕生日。
それでも待っていた、
雪はまだ降らないのかと。
暖房をいれずに、
生まれたときと同じように、
雪が降りつもらないかと。
二年前からある、
パソコンの、
インターネットをしていた、
ディスプレイの脇、
(会ったことのない)
文通相手から、
はやめに届いていた、
チョコレートの、
紺の箱を、斜めにたてる。
そばの、
CDコンポから、
静かに音楽が、
エンドレスで流れ、
白い封筒に手紙を入れる。
二年前からあるパソコン、
昨夜、ネットをしていた、
(だれの顔も見なくてすむ)
ディスプレイ、
ワープロソフト、
点滅するカーソルを、
しばらく見つめつづける。
わたしは、
この身につもる、雪を待つ。
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作品 - 20070201_897_1811p
- [優] 白の誕生日 - みつとみ (2007-02)
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