誰かが結び目をほどくように
この世からすべての母はいなくなってしまった
それからというもの
わたしたちはわたしたちのてのひらに
なにかしら母と呼べる物を乗せ
黄昏の明かりにそれらをかざし
祈るように透かしてみては
検分し
わたしたちの遠い死までのあいだ
めざめればいつもひとりであるように
とじられたまぶたの裏側で
この渇いた流れを
幾度も反芻してきた
形あるものすべて
不意に流れゆく定めであり
わたしの母もまた
夕暮に捉えられたまま
薄墨となりながされていった
夕闇の台所に
ふきこぼれた鰈の煮付けを
残したまま
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選出作品
作品 - 20070106_206_1743p
- [佳] 黄昏譚 - レモネード (2007-01)
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黄昏譚
レモネード