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作品 - 20061209_861_1702p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


寄り辺へ

  橘 鷲聖

そうして人々は眠りだした
耐えがたくなった神との契約は断たれた
行進は行き先を定めて
知りうる際限の果てに幸福を得て
その智彗と記録だけを山にした
ただ我々がどこから来たのかを
白紙にして

あゝ
心は疲れてしまったのだ
自由や祝福を競い合うこと
冷徹なまでに理性に裁かれること
愛を疑うこと
そして男と女を変哲のない人間に直すことに

見よ
あの火のような活動も追従も
あらかたの繁栄の象徴も
化石のようになって
雨風に抱かれるままになった
推し量るときには空と鳥を見るばかりとなった

国境線の監視塔から星空を見上げた
果てから果てまで遮るものはなかった
刑務所の高い要壁から地平線を眺めた
重い荷物を担いでどこまでも歩いてゆく背中を視た
港に繋がれた戦艦から大洋を見た
勝ちとったいくつもの栄光より夕日に輝く海は眩しかった
だから人は泣くのかもしれない
悲しみの本質はそこにあったのかもしれない
いまはまだ誰も話そうとしないけれど
詩人たちはいずれ謳う

何もない丘の草原で
どこから来たのか知れない女と
言葉を使わずにそんな話をしている

文学極道

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