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作品 - 20061023_177_1623p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


地球儀はまわらない

  葛西佑也

眠っているんですか?/てないですね。
あなたはそのお気に入りの、カーテン、レース
のやつのほつれを直そうと、必死になって毎晩。
ぼくは嫌なんだ/よ! ほつれてあいた穴を覗
けば、世界があるんだから!ねえ、やめよう。
それで、何にも気にせずに、深い眠りにつきま
しょうよ。こっちに来て。
(世界が見えていたっていいじゃん)

レースを縫い合わせる、あなたの、手、柔らか
そうでした。とても。ぼくはぽっかりあいた穴
から向う側を覗くことで、あなたの手を見る事
ができた/んです。
それが、世界でした。

/だから、ぼくは世界を愛している!/んです。
だから、掴みかけた空がラクガキだとわかって
も手をおろすことができなかった。
(ぼくがほしい/かったのは、死臭がしみつい
た手、です/した。毎日、ぼくたちのため、料
理をして、死臭がしみついたその手!/でした。)

あなたが世界を嫌うのは、ぼくの掴みかけた空
が青すぎるからなの?/ですか。(非現実的だ
ったのかしら?/ね)もう、がんばらないで。
あなたは、編み物だって縫い物だって苦手なん
ですから。/ね。

ラクガキをした人は、世界を見たことがありま
せん。/あるはずがないの、です。だけど、空
が青いということ、雲が白いということを知っ
ている/ました。(地球儀では空のことなんて
わかるはずないのに/どうして? 不思議。)

ラクガキは気が付けば部屋にあったんです。ぼ
くの部屋を訪れたたくさんの人々が置いていっ
て(くれた/の?です。)ラクガキのこと、本
当ですからね。

私/ぼくはあなたに言えないことがたくさんあ
るけれど、紛れもなくあなたから生まれたんだ。
信じて! たとえ、本当のぼくを知ってしまっ
たとしても、何も言わずに抱きしめて!/せめ
て。 ぼくがこの手をおろせるように。

目覚めると、穴の塞がれたレースのカーテンに
気づき/ました。ぼくは、そこにある不器用さ
をほどいて、もう一度穴をあけようとしている
/いました。

ぼくを、恨まないでね。
もうすぐなんだ!/です。
もうすぐ。
世界。

文学極道

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