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作品 - 20060829_223_1511p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


オートマティック

  樫やすお

昨日と今日という区別はくだらない
ただのっぺりとしたものに彼らは乗っていて
そうしてどこまでも全自動で
いけると知っている

ぼくは黒板に目を向けたとき
必要なことすべてをやってのけていた
ただし緑色の粉が水槽に落ちたとき笑っていたものは
たいていが死んでいるか
死にかけているものだった
死すらも劇的だ
ぼくは彼らの性愛にも見飽きたら
成人式の後の残滓ともども彼らが
プロペラに挟まって死ねばいいのに
と強く願うことになるだろう

粉々になった剥き出しのガラスでも
それが風に吹かれていれば
誰も痛みを感じない
それと同様に
少なくとも彼らだけは
自分たちだけで何かをやっているとは
まったく信じていなかった
それでやたらとわめきたてるというわけだ
その馬鹿さ加減を身をもって
表現することが狙いだったのだ
感動的なんだ
きもいしね

美しく生きるということが
ありうるとしたら
成り行きのほかにはないのかもしれない
それが奇跡かどうかなんてぼくにはわからない
でも破れたビニール傘をさし
星の光をよけて眠る不思議な夜が幾夜かあっても
ぜんぜん困らない
役にたたないしね

文学極道

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