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作品 - 20060826_175_1504p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


まぼろし。

  he

根本さんは無口だ
機械なんじゃないかと思う
昼下がりの頃
バス停に佇む老人のようで
淡々と逆上がりに打ち込む
小学生のようで
何を考えているのか
何も考えていないのか
甘党なのか
その表情からは
何も察する事はできない
例えば水は
ひとところに集まり
大きな粒になろうとする
けれど
根本さんは根本さんのままで
油をまとった水滴のように
最小限の体積で
そこにいる
まだ
触れることもできないくせに
手を引っ込めて
日々を飛び交う事件の中で
ダイオキシンが騒がれて
校内の焼却炉は閉鎖された
窓の外にはムクムクと
青白い煙が透明な酸素を
ひとつ、ひとつ、消していきながら
昇り
不思議そうに見つめる根本さんの瞳に映り
僕の瞳にも
根本さんの瞳の奥が
ゆらゆらと揺れながら

映っている

文学極道

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