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作品 - 20060824_158_1500p

  • [佳]  不敵 -  (2006-08)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


不敵

  

きょうはおいらより若い男に殴られそうになった
横断歩道には店々の光と信号機が威勢のいい若い男を照らしていた
その男は彼女を連れていたし おいらはその男の彼女をにらんだわけでもなかった
その男をにらんだわけでもなかったのだ
横断歩道の信号が変わりいっせいに歩きだす
知らない他人同士のさっきまでの10メートルの距離が
心もち他人同士の目礼とともに縮まりあいまみえたときだった
その男は親愛なるファイターのようにおいらに襲いかかろうとした
もし本当に殴られたら一応殴りかえそうという準備はいつもしている
だが本当に殴られたくはなかったので
おいらはコートに手をつっこんで立ちどまり下を向いて落ち着いてみた
一瞬ふくらんだように見えたその男はそのまま音もなく過ぎた
その男には去り際に吐くような傷心がなかったので
おいらもそのまま傷つかなかった
本当に殴られることはないだろうけど
人に殴られるということがどんなことか
どうして殴られなくてはいけないのか?
殴られたらきっと頭ががくんと来て
頭のなかががちんといって
おまえが殴られるはずないだろう?と思いつつ
そうだ おいらはほんとうは殴られるはずはないと思いながら
本当に殴られたら一体どうしようかと考えてみると
おいらはその横断歩道で倒れふし 頭の痛みとアスファルトの痛みを混同して
街中のクラクションというクラクションに煽られ
人目のふし穴というふし穴に落ち込み
怒っているのか笑っているのか?信号器のチカチカという瞬きだけで
知らないおばさんの助けようとする声も嬌声か叫び声かにしか聞こえず
子供はなぜか赤の他人のおいらを見て泣きじゃくっている
それでも疲れて打ちのめされていたらやはりおいらだと思って馬鹿のふりをしているしかない

文学極道

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