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作品 - 20060710_266_1400p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ガリレオと八王子駅前で

  Tora

午前と午後が見事に溶け合って タバコを買いそびれた深夜に
八王子駅前の雑貨屋のシャッターを思い切り蹴った
振り子のように行き来する列車に
乗車拒否されたような気がして 泣いた
涙しても顔が引きつる事は無く 
汚い 汚い
コインランドリーでグルグルしたい

待ち合わせの時間が近づく頃
歩道は首輪のついたヤギで溢れかえり
「銘々がメィメィ」とうまいことを思う
感情は大聖堂の鐘のように左右に振れ
いつでも ご陽気だ

久しぶりの再会だったのだから
喫茶店ぐらいには入りたかったが
車道を渡るのが面倒くさくて
二人して ヤギに紛れて駅へと向かう

「明日へ向かったのだから 過去に向かうのは自然な行為だ」

「生きる意味を求めたのだから 等しく死をも求めるのかい」

「いっせいのせ」で駅員を振り切り走り出し
3番線ホームまでのその見事なフォーム
見とれる観客を尻目に二人はダイブ
勢いあまって反対側ホームに着地
「そういえばさっき面白い事思いついてさ」
俺の話に彼は大いに笑い
「くだらないね」とつぶやいて
俺たちはフサフサとしたヤギになって
快速列車に乗り込んだんだ

雑貨屋のへこんだシャッターは翌日には綺麗になっていたし
3番線ホームには「ダイブ禁止」の立て看板
どちらが底へ早くたどり着くかの競争も意味を無くした頃
午前と午後は再び綺麗に分かれた

とても良い日だ

文学極道

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