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作品 - 20060619_641_1336p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


たべもの

  りす

ベイビーは寒天のなりすまし
プルプルふるえながら
五月のベランダに這い出して
毛布の毛羽立ちをつまんで 
ホイップのようにツンと立つ
空を見上げる
くしゃみでそう、くしゅん
春風にのって綿毛の精神で飛ばされて
鯉のぼりをくぐって 戦闘を組織する
血は流れなかったよ
ベランダの洗濯物に憑依してお茶の間へ
テレビの中は自然体な戦場で
兵隊は整列してテレビを見ている
ベイビーは整列して母を見ている
おかーさん、
エプロンに透明な血が、
大丈夫、
角砂糖なめて、生き残ろう


井戸の中で破裂した爆弾の話
知らない生き物がうようよ出てきて
眼鏡をはずせば たべもの に見えた
とりあえず捕まえてリアカーにのせて
姉さんが手拭いで首を絞めて殺めて
縁側にぶらさげて乾かして
ご飯にのせて食べたり
おつゆにして飲んだり
着物と交換したりして 一家団欒
たべもの とっても おいしかったよ
またいつか井戸に
爆弾が落ちるといいね


わしゃわしゃ
沢山のベイビー
わしゃわしゃ
沢山のおかーさん
わしゃわしゃ
ああ、こぼしちゃった
キッチンペーパーがベイビーを吸って
おかーさんがベイビーを流しで絞って
低温殺菌だから 死なない
燃やせないイノチに分類されます

急に雨が降り出して
おかーさんはブツブツ言いながら
五月のベランダに走り出して
洗濯物をフランスパンのように抱く
空を見上げる
するすると鯉のぼりが降りて
ベイビーがベランダに整列して敬礼する
おかーさんがフランスパンを構えて
鯉のぼりの口に砲撃する
やっぱり 血は流れなかったよ

文学極道

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