水で作られた駅から
街の下層に眠るもうひとつの街へ
幾つかの顔が消えていった
そのひとつが見上げた空
青黒い雲の層の上に
放射状に光の線が広がる
夏の終わりだった
交差点の
古いハイヤーの社屋にだけ
雨が降り続いている
「雨竜」という地名にふさわしく?
ひとつの顔が首を横に振る
顔のただれた娘を抱いて
「新十津川」の漢方の治療院へ
ひとりの母親が、
そこでハイヤーに乗った
雨の声に追われるように
寄り添うように流れる
雨竜川は
水の列車
交差できなかった
時を遡るように
窓に浮かぶひとつの顔は
思い乱れるようにうつむいていた
秋の空の高さを抱いて
雨の声に声を重ねて
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作品 - 20060529_280_1297p
- [佳] 水の旅 - ためいき (2006-05)
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水の旅
ためいき