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作品 - 20060509_831_1244p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


【シャルロットの庭】

  fiorina



英国キューガーデンの一隅に
夏季だけその扉を開く小さな庭がある
広い園内を歩き疲れた頃 偶然たどり着いたのだ


入り口に置かれた木の長いすに
銀髪の婦人が斜めに腰掛けて 新聞を読んでいた
古い手紙を読むにふさわしい 夕暮れの
人気のない庭


痩せた少年の庭師が
紫の花株を手に
花をおいてはすこし離れて眺め
新しい場所を物色していた


一足踏みいるごとに 私は胸そこからの感嘆の声を呑み
足の疲れを忘れていった


流れていない音楽が
詩人の瞳が
死んだ恋人たちの 笑い ささやきが
一刻ごとに訪れては
去っていく


花のいろの沈んだ華やぎ
門柱
白いオブジェ
藤棚のトンネルを抜けると 小径は小高い丘へと続き
ふいに凍てついた遠景を見せる
重い雲が彼方の光りを包んでいた


2001年9月12日
新聞を読む人の眼が 何を見ているかしっていた


私たちを襲うもの


その予感も
起きてしまうことへの戦慄も
不意に自身がその渦中に置かれることも
遠く知ることも


此処でなら
私は・・・


いつか最も美しい場所も瓦礫になる


此処でなら
わたしはいい


ひとに用意された惨劇を知りながら 何一つ変えることができないとしても
それが起きるに相応しい 最も美しい場所をあらかじめ用意すること


此処でなら と死者が思い
あなたとなら滅びようと 場所がほほえむ
私の庭を領土として拡大する
そこに生きる時間を注ぐ


それが私の報復だ

文学極道

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