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作品 - 20060428_436_1212p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


エミリアーノ・サパタ

  コントラ

カフェのガラスの向こうでは
カーニバルの飾りつけがはじまろうとしている
彼女は前の日に時計が止まった話をしながら
手首を裏返してみせる

教会前で待ち合わせたのは12時
正午の太陽は僕らの頭上から
街を炭酸水の無色透明に還元する

大通りでは
クリスタルというラベルが貼ってある
炭酸水の群がトラックの荷台で
街の北から南へはこばれてゆく

カルラ、あなたは白く乾いた路地が
交わる88番通りの角の雑貨屋で昼間
うず高く積まれたカートンのむこうから
眠たそうな目だけをのぞかせて
往来を眺めている

バスが地面を揺らせながら
狭い通りを通過する
フロントガラスに白いペンキで書かれた
行き先は「エミリアーノ・サパタ」
それはメキシコ革命の英雄の名では
あるけれど

街の南の、環状道路の交差点をこえて
刑務所の長い塀をすぎてゆくと
木立と鳥の鳴き声に混じって
セメント造りの低い家が点々とする
コロニア

あそこは以前、べつの村だったんだ
マルコスは言っていた
街の南の、それでも少しは街の中心に近い、
ハンモックが揺れる
タイル張りの床の台所で

夜が更けて
テーブルに肘をつく僕らの横を
何台ものフォルクスワーゲンが
通り過ぎていった

午前0時
僕らは
売春婦が客待ちする黒く汚れた
塀の角から
エミリアーノ・サパタヘくだるバスに乗る
薄明かりの電球に照らされ
電灯の減ってゆく家並みを網膜のモザイクに
焼きつけながら

文学極道

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