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作品 - 20060424_319_1191p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


陽だまりのマリー

  atsuchan69

英国式庭園の花たちのいろは 乱暴
きいろ うすむらさき 赤、 アカン 
うちはもう 戻られへん あんたの所為や。
マリーは そう言って、立ち上がる、
白いタープ 木陰のテーブル 高価な陶器に秘められた 
インド行きの船 渋く涸れた紅茶と 焼きたてのスコーン、
きらびやかに香る 自家製ママレード たっぷり。
まるで僕には 不条理な 問いそのもの しかし、
ミルクが先か 紅茶が先か 答えはついに
判らなかった。それでも 去年の春、
土筆のはえる なだらかな丘の斜面を からだが火照り、
ふたり 転げて、あおいだ 空。
そよ風の愛撫 僕のイゾルデ とささやくと あまい息
名も知れぬ 草花の数ほど たくさんの口づけ くりかえし
マリーは僕の胸 やがて小鳥が囀るように、
わたしの トリスタン 死なないでね そう言った。
(そのとき、僕は 落とされた ダントンの首 をイメージした)

コンバーチブル、ふたり ならんでサングラス。
君はフェルトの帽子をふかく かぶり、
ナイト&デイ ♪口元の笑み 謎めいて
高速道をひた走る 異教の信者 ふたり この世界をはなれて
すぐそこに きらめく漣(さざなみ)が 見えていた、
自由が かけがえのない夢が
うちよせている 彼方・・・・

眠気をさそうほどに つづく 言葉のられつ
まだそこに陽だまりがあった、
クォーツの秒針をきざむ 胸の鼓動
マリーは泣いた 泣きじゃくり、やがてしくしく
泣きながら 僕じゃなく きっと 別の何かをみつめていた。

マリーは家にもどり 権威ある
ウインチェスターM73 を連れてきた。
撃つわ、覚悟して!
砕かれた ウエッジウッド ふきとんだ格式、
こっぱ微塵。午後のけだるさは あえなく 舌をながく垂らし、
神よ!
ああ、ここは特に【mediocrity】凡庸な表現です、お許しを・・・・

――穏やかな 陽だまりに くっきり 青い影をのこして 死んだ――

そして僕は とっさに、やむなく 紅茶が先だ と答えたのだ。

連れ去ったんじゃない、きみが僕を 連れ去ったのだ。
ああ マリー、ずいぶん 遠くまで来てしまったね、
もう サングラスも 帽子もいらないよ、
最初から、この愛に  隠すものなど要らなかったんだ。
その時、合成された音声 ナビのささやき、

 この先 700メートル前方 海です

ああ、すぐそこに ほんのすぐそこに
途方もない ひろがりと、あらぶる大波のしぶきが襲う 自由 が見えていた。
どこまでもつづく 砂浜 さまよう足跡
乱暴な想いが 寄せては引き 果てしなく うちよせている。
つよく輝く マリーの瞳に映る 僕じゃない 別の何か
そう、ただそれはあまりにも儚い 「永遠」
一瞬のことば 詩 ごときもの。

文学極道

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