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作品 - 20060419_238_1182p

  • [佳]  対話 - 蝿父  (2006-04)

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対話

  蝿父

 
小春日和に叫びたい沈黙が溶けだした琥珀のように木々のあいまから
わたしの体を塗り固め身動きがとれない幸せに肌をあわせて気付きました

寒空から見上げた
どしゃぶるの中
深々と鳴るの中
あなたは叫ばず黙々と
いつの日か空へ飛び立つために両手を広げてらっしゃる
長い年月をかけ悠々とした足取りで休まず歩いてらっしゃる
仏頂面に隠された
その胸のうちをなんぴとにも知られず今日も森々としてらっしゃる
幾世、幾月。当たり前のように今日も森々としてらっしゃる

ひとつの
はな房を芽吹かせる為に
どれだけの山を削り
悠かな大河を飲みこみ
眩暈のする億年の刻をかけて
何光年先の小宇宙から黄金律を捻りまげ観せたいの一心で辿り着いた蕾に震える両手
この日を迎えて頬を染めながらも仏頂面はやめないのですね
たまには慌てて飛び退いてみなさい!

わたしはわたしだ
この先、あなたが土塊になったとしても
わたしはわたしだ

と聞えてきそうな叫びたい沈黙は溶けだした琥珀のように木々のあいまを伝い
わたしの体にとめどなく降り荒び泣きじゃくる最初のひとしずくを戴きました

桜樹の下にできた真空地帯で

 
 

文学極道

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