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作品 - 20060408_894_1144p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


月とドーナツ

  

銀河鉄道999の定期は 地球-アンドロメダ 無期限 である
だからどこかのターミナル駅で途中下車し 
銀河鉄道の別列車222の通勤列車に乗ってもよい
それでメーテルと別れてしまっても
メーテルは実際 何かを言っているようで 何も言っていない
だからと言って メーテルを責めるわけでもないけど
長い金髪のメーテルはヨーロッパ人でもなければ革命的なアメリカ人でもない
母さんでもないし だいいち殺された母さんの仇はとっくに討っているのだ
いまさら地球に戻る理由もない
銀河鉄道999はそもそも機械の身体を手に入れるために乗っているのだから
そんな非人間的な野望を抱いたばかりに鉄郎はかえって命の危険に直面するのだ
だいたいどうして列車の食堂にラーメンがないのか?
鉄郎はラーメンを食べることこそ偉いことなのだとどこかの惑星の人間味のある男に教わった
彼の言ってることは味だったがそれは自分でラーメンくらい作れということだった
そこで 鉄郎は 
地球-アンドロメダ 無期限 の定期を売り払い
地球-アンドロメダ 800年 の定期に替えてもらった
それでもお金はずいぶんと余ったので
銀河鉄道666の各駅停車に乗って
のんびりとして景色のよい田舎に家を買った
昼過ぎに庭の手入れをした
そこから採れたハーブを自家製のカレーに入れ母さんを思いだした
沁みわたった牛肉とともに
夕闇に涙してすこし懐かしいと思った
女の子が来たら紅茶とドーナツをふたりで食べた
むかし別のある女の子はシュークリームをくれると言った
その女の子はけっきょく通勤列車に乗って別れてしまった
鉄郎はハープの草を嗅ぐとき
その別れてしまった女の子が作ってくれたかもしれない
きつくて甘いバニラエッセンスをたまに想った

文学極道

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