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作品 - 20060406_869_1143p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


東京/シリウス

  Nizzzy


目は覚めているか?
東京 この都市のどこかで
紫の服を着た聖母が歩いている
黒ではなく赤く
 濡れた 路上の端で
寒椿の花がひとつふたつ 
落/堕下している
東京の、
一番高いビルが審判だ ここは
法廷だ 自由法廷だ
その中で山手線の動く音
が、骨音だ
サラ地に生き残した断罪者があげる 六腑
 のシシュウだ
メトロのドアを開けるんだ
腕の無いエイズ患者にどうしてみんな気づかない?
雨だってこうやって降りしきっている
丸ノ内の地下のパイプラインに
彼らの血がはいっていない
 と誰が言えるのか!
魂とクビキのある法廷の中では
曇り空の方が、真実よりも青く醒めている
皇居の庭にコンビニのビニール袋が 
風に舞っている
なにかひとりの鬼になる だれも
 いない
そうだ、すべては胴体の中に
 あるフィルム・センターだ
鼓膜と虹彩をモンタージュしろ
民族の記憶とやらをペーストしてしまえ!
群青/像を重ね合わせて、行間をアジテートするんだ
そこがマドだ 全ての日比谷ビルディングスの
ガラスを粉々に砕いてしまえ!
それを飲み込んで涙にかえてしまえ
シリウスだ、3つの
 シリウスだ
局所に点在する(身体)を反乱/氾濫せよ
シリウス、シリウスなのだ!
それは都庁の影に隠された数多くのシリウスなのだ
審判に向かえ 本当に空
 があるうちに
そのドアは明けのうちに開かなくてはならない
見るがいい、
道脇の安全柵は逆立っている
まるで機械にうばわれた海の呪いだ!
その呪いの下で黒い犬が1匹
 腐りかけている
雨だってこうして降りしきっている
聖母の左手が金を握っている
腕の無い患者たちがビルディングのマドに
 写/移っている
覗き込むがいい、
アスファルトの上で、土に還ることのできない
子犬の瞳を 青醒めた腐肉の
中を舞う にごったビニール袋を
それは鬼のような俺だ 篝火だ!
シリウス、
 シリウスなのだ!
すべての骨に降るシシャの雨だ!
すべての涙に塗られたウィルスの空/殻だ!
すべてのシリウスだ!
すべてが東京に流れる記憶の
 動/胴乱なのだ

文学極道

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