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作品 - 20060130_553_936p

  • [佳]  冬の雨 - 樫やすお  (2006-01)

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冬の雨

  樫やすお

猫は町に行く途中に殺されるであろう
雨後の漁港に繋がれて
少女に手を引かれながら殺されるであろう

私はガードレールの下で歩き疲れて長い間眠っていた
日本海に目を瞑った深夜だった
地下茎は凍てついて
再構成される記憶の中で
今夜も夜行列車が新潟に向うな、と
レールの軋みが聞こえて目を覚まし
列車がフミキリにさしかかると
眠りの中に、
ぼそぼそと低く呟きながら揺すられる人々が現れる

ぼやけた私たちは海底のゆるみに走り書きされた
港町に住む少女のピアノ線は
明け方に張りつめて、
膨らみあう両目を向け
水平線を押し殺そうとしている
少女ははらはらと熱を重ねて
誰にも見られないように舌を噛み切った

なにげなく小刻みしている波頭に
しなだれていく私の影も何度も死んだ
次々と思いに換えられてしまう
沖に奪われてしまった
ガラスのような色

何かを残されていったような気がして
私はたくさんの貝殻を蒐集した

電柱の重い骨格だけが空にかかり
ベランダに隅なく日が射した
海浜をめぐる裸足が
曙光を踏み分けて進むと
猫は強熱にうなされて
今朝、
工場のドラム缶の上で轢死した

文学極道

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