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作品 - 20051217_866_837p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


たったひとつの冴えたやり方

  りす

あなたの肩はスムースな浅瀬を求め
雑踏の隙間を測り始める
伊勢丹の温かい黄金電飾が
零れ落ちては流される明治通り
広告塔に見とれるふりをして
その先の空を探す

五年前この上空を飛んだとき
あなたは眼鏡をかけていなくて
見えないから怖くはないと強がった
薄い機体にくるまった固い体温
このまま堕ちたらラッキーかも
そんな言葉を東京湾に落とした

眼鏡をかけたあなたは
ルーラーで雑踏に升目を引き
薄い肩を滑り込ませる
背中を見せないこと
あなたの好きだった言葉
たったひとつの冴えたやり方

世界堂で青いボールペンを買う
新宿通り
言葉が溝であるような
暮らしの始まり

アフタヌーンティーで来年の手帳を買う
甲州街道
日付が鍵穴であるような
暮らしの始まり

風にめくれるコートの裾を
手で押さえる接触も冷めて
空に逃げていく体温を追って
西口の長い歩道橋を上る

あなたが跨いだ残り火が
街に馴染んで消える時刻を
空に近い場所で
待つことにする

文学極道

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