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作品 - 20051116_341_745p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


シャクティ

  鷲聖

窓辺に向かう途中で
おまえが無意識に触れた鍵盤の音が
いつまでも
雷光に確かめたシルエットは
後ろ姿だったか
それとも
どうでも良かったんだが
俺も雷鳴の唸りに併せ
華奢な肩ごしまで歩を詰める
硝子を伝う雨
ここが何階か忘れたが
眼下のネオンが滲むだけの光景
べつにムードは無い
それより
思いでばかりが
心をよぎる
失ってきたものばかりが
伝う
だから俺は
髪を掬おうとして
気づかない横顔に戸惑う
このひどい雨に
出掛けようかと切り出した言葉の憂い
なんて静かに
懐に抱きついてみせたおまえに
また戸惑い
どうして思いでばかりが
伝う
温もりを確かめ合わなければ
どうにかなりそうなのかもしれない
こんな時
この滲む向こう側を支配したようにしか
おまえを愛せないことが悲しいと
云えない
耳元に寄せた唇は
囁かない吐息
目を瞑るとあの音階が
まだ
続いている
ふと
記憶のなかで
喧噪のように渦巻いていた轟音が
潮騒かもしれない
と思った
激痛が引いたような穏やかさが満ち
おまえのからだを
いま確かに
抱いていた
やさしく引き離した
おまえの蒼白の美貌に
硝子の伝う雨が投影している

文学極道

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