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作品 - 20051107_047_700p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


一つの風景のスケッチ

  樫やすお

硬質な林檎は凝結している
手にとって捧げる物は
並木道に人々は傘をさして行く
紅いハイヒールの逆光を感じ
塵が宙を移動する
格子の目を瞑り
そっと静まりかえって
森が固い感触を持ち
「私」の塑像が
多彩なカーテンに包まれて
白さを増してゆく
観念であり
芝生の複雑な緑に囚われている人々の
「原像」は「時間」と「音」であり
「私」は「原像」を所有していない
(ベランダに立ち
並木道に降る雨を聴く)
深部に消えて行く印象に
追いすがり 抽出される
piano 月
土に 落とされてしまう
雨に混じっている
レールが軋んでいる
区別するとすれば
それは 一掴みで逃げてしまうだろう
植物を手に取ると
『理解できない感触』
或いは
『何らかの感情を探る』
この枯葉は「死」か「孤独」か
「私」は隠喩にまみれて
歪んでいる 歪めている
痴人の識別する無我の我
言葉の無い裏づけ
裏づけの無い言葉が発音され それは意味する
写真を何枚も燃やし
煙が色を含んで立ち昇る
体が膨張していくような開放感が
次々と闇に葬っていく
空虚で内面が研ぎ澄まされてゆき
それは 限りない球体のはじまりの地点でもある
真空の内部を「音」が掻き乱している

文学極道

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