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作品 - 20051031_922_681p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


雨の日

  鈴川夕伽莉


空の大きなバケツがひっくり返ったら
広いはずの世界も一度に水浸し
神様の大きな腕によって
洗い流されるべきものについて

あなたは数え上げるだけ無駄だと笑うけれども

雨が洗い流せるのは
せいぜい側溝に逃げ込んだ落ち葉くらいのもの
それすら鬱積すれば
水の流れを堰き止めるだろうと

あなたは傘を投げ出して行こうとするけれども

こんな日は偉大な循環について
考えるべきだと思うの
つまり
決して乾くことのない戦場から
せめて血液の匂いを洗ってやれないかと
バケツはひっくり返るが
水は一般市民の遺体で目詰まりした街から
流れることが出来ず
神様は次の手を打つ
わざとらしく雲を蹴散らして
血液もろとも蒸発させるわけ

それらを
少しも傷つかないふりをしている
街の空に降らす
つまり
平和ボケしたから次は戦争がしたいと
望んでいる人の需要を満たせないものかと

あなたの

口を開けて歩く癖が
直らなければいいと思っている

文学極道

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