ブナの森には雨が降る
白い蛾の何匹もすれ違う中
いつの間にか、そこにある
手に取ることができるのは緑に染まった雨の色
埋葬された密林の奥深く
残されていた いつかの冬の白雪は
雲雀の声に甦る
海面の亀裂
光が洩れる蒼の襞
風景の その風景の霞む森
ここが
森なのだ
と 触れる霧
枝を払って進んだ先で 白い蛾を五匹つかまえた
指の間の雫のように 零れて風に浚われた
不思議な声がする
「私はここにいる、分らないだろう? 」
この硝子のような森と雨
遠くからの印象は
確かにそれと知れたのだが
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選出作品
作品 - 20051024_788_659p
- [佳] 心理を疑獄する狐の疑惑 - 樫やすお (2005-10)
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心理を疑獄する狐の疑惑
樫やすお