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作品 - 20051021_731_652p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


思春期の梦

  紅魚

見えたのは白でした。
風が酷く温(ヌル)かったのです。
彼の人の背(セナ)は虚ろに細く
軟水のように緩やかで
そこで溺れることも出来ません。
有り得ない桃源の底
拡散の手足が百八つ

汽車の律動が遠くからやってきます。
ピィルリと軋むのは瑠璃鳥の聲です

意味もなく駆ける
水を得たように、はしゃぐ
あの背(セナ)に触れたら
呑んで貰えると夢想したのです。

静かに降るあれは何でしょう
何だかとても生きている心地がしないのです

何處かで萌芽の音がします
夜が明ける、
空には月二つ
尾鰭のある赤いのと
鱗のある白いのと
滴るようについてくる
まるで
そう、
眼球のようです
標本にしたいような。

口を開けば
りろりろと音がする
夢ばかり見るから
とうとう入り切らなくなったのです
困ったことにあたしは
雑音を抱えたまま
世界地図を指差して
彼の人に尋ねなければならない

「これはあなたの落とした卵ですか、」

彼の人の笑みは
きっとメサイヤのようです。

水滴が落ちて
空気に波形の動揺が押し寄せる
何處かで萌芽の音がします
砂時計とメトロノゥムが張り合えば如何なるのかを
あたしは知りません

文学極道

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