(1)
赤錆た非常扉のハンドルを回したら
ことわざのあるに出た
傾斜する時間のベクトルは復元力を失い
秒刻が路線地図の上をはいずり回る
(2)
壊れた交信機から雑音がこぼれ
地面をはいずり
鳴きみみずになって耳鳴りを奏でる
一輪車の少女が
逆さまに覗いた望遠鏡の地平線を横切る
(3)
振り子は語り尽くされた物語を繰り返し
中心で繋がれた長針は再び同じ位置にたどり付き深い溜息をつく
秒刻の微小なベクトルは遠心力を得ず
円周から垂直に離脱する幾何学を夢想する
(4)
時計台の針が横一直線になった日に
星が真下に流れたのを合図に
木は根を大地から抜き出し
みごとに茂った枝葉を羽ばたき
ゆうべ月の昇る方向に飛び立っていった
(5)
すれ違う灰色の馬が「謙遜したって駄目」だと
教えてくれた時刻に
対岸の岡村と言う町のあたりの灯が
湖面に揺れだしたので
家に帰って鮎の仕掛けを作らなければ
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選出作品
作品 - 20051003_257_575p
- [佳] 愚感 - かさ・やす (2005-10)
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愚感
かさ・やす