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かさ・やす

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

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愚感

  かさ・やす

    (1)
赤錆た非常扉のハンドルを回したら 
  ことわざのあるに出た
    傾斜する時間のベクトルは復元力を失い
    秒刻が路線地図の上をはいずり回る

    (2)
壊れた交信機から雑音がこぼれ
  地面をはいずり
  鳴きみみずになって耳鳴りを奏でる
     一輪車の少女が
         逆さまに覗いた望遠鏡の地平線を横切る

    (3)
振り子は語り尽くされた物語を繰り返し
中心で繋がれた長針は再び同じ位置にたどり付き深い溜息をつく
秒刻の微小なベクトルは遠心力を得ず
円周から垂直に離脱する幾何学を夢想する

    (4)
時計台の針が横一直線になった日に
星が真下に流れたのを合図に
木は根を大地から抜き出し  
      みごとに茂った枝葉を羽ばたき
        ゆうべ月の昇る方向に飛び立っていった

    (5)
すれ違う灰色の馬が「謙遜したって駄目」だと
教えてくれた時刻に
対岸の岡村と言う町のあたりの灯が
湖面に揺れだしたので
家に帰って鮎の仕掛けを作らなければ


不毛の軌跡

  かさ・やす

    噂で聞いた 彼の訃報

  あの男の整頓されたアパートの
壁に掛けられた 盗掘された古墳の写真

    別れたのは何時だったか
       忘れた

   膨らんでしぼんだ風船ガム
     濃いルージュの 
      唇にからまる

文学極道

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