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作品 - 20050825_474_435p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


夏のへだたり

  りす

水道の蛇口をひねると
秒針がざっくりと出てきて
洗面台を埋めてしまった
仕方がないので 
それで顔を洗った朝
君に会いに行く

紫外線の指揮する音符が
足元に絡み付いて離れず
歩くたびに 電柱を数えろ と命令する
電柱の数だけ嘘がある
電柱の数だけ権力がある
電柱の数だけ争いがある
そんなデタラメを吹き込まれながら
君に会いに行く

ハンドバッグにいつも
銀色のストップウォッチを忍ばせている君
正確さと意地悪さが双子だとは知らずに
僕の脚力を値踏みしている

夏だというのに蝉は鳴かないし汗もかかないところをみると夏ではないのかもしれない
都会の蝉は声が悪いから追放されたのかもしれない
汗は外側ではなく内側に流れる仕組みに変わったのかもしれない
夏が個人的に語りかけてくる時代はもう終わったのかもしれない

長すぎる時間軸と 短すぎることばの射程距離は
生来 肌が合わないから
いくらデートを重ねても
つないだ手の冷たさに いつも少し
うろたえてしまう

プール帰りの子供たちの 日焼けしたうなじに
走る風はすみやかで 少し濡れている髪の重さを
未来の方向に運んでいる

文学極道

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