だれの制止もきかず
駈けていくユートピアの
光を追って
草木は伸びきり
枯れることもない
日に日に満たされていく土地
あんまり速く
駈けるものだから
家のなかに三人で立っている
何人もの父親母親がわたしたちの頭
を撫でていったけれど立ち止まるひとは
一人もなかった
追いつけないわたしたちを忘れて
どこへいくの
どうしてそんなことを
するの といいながら
わたしたちは許容し組み敷かれ
うずめられて
高揚した
剪定された
庭の光からのがれ
立ち止まったまま
ユートピアの光が
渦となり土地を燃やしていくわたしたちを
忘れて土地は満たされ草木は
いつのまにか枯れて土に
はりつく
もういちど ともとめながら
口に出さなかったことを
とがめた
光の真中で
ぐるぐるまわっている
なにも思い出さない光が
消えてもわたしたちはずっと
残っている
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選出作品
作品 - 20050822_398_415p
- [優] 後の野で - 軽谷佑子 (2005-08)
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後の野で
軽谷佑子