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作品 - 20050714_836_319p

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ヒロシマ

  丘 光平

   朝
   風は白いハンカチのようにゆれ
   ワタシの空は
   さよならといった

   張りさける悲鳴とともに
   熱と波の
   おおきな花火は
   かなしみを生むかなしみの花火は
   降りくだった


    そこから先をああワタシは覚えていない

   覚えているのは
   母たちは手を振っていたこと
   男たちは汗をながしていたこと
   こどもたちは
   目をこすりながら
   手のひらを帰りを待つはずだったこと


   ごらん
   陽は
   昇ることも落ちることもやめ
   ひとはひとであることを失い
   おんなじ色の形の影絵になってしまったよ

   ごらん
   涙を血をいのちを流すことさえゆるされず一瞬に焼かれた
   いくつもの
   いくつもの影絵に浮かぶ
   蛍を
   蛍たちの声なき灯火は紅の川になり
   川は川のなかに沈んでいったよ



    ワタシはそれらが
    昨日のようであり何十年も前のような気がする

   変わらないのは
   いまもなお
   母たちは手を振っていること
   男たちは汗をながしていること
   こどもたちは
   目をこすりながら
   手のひらを帰りを待っていること

文学極道

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