罪悪感は階段を駆け上る
寝ぼけ眼の弟はこれからおしっこに行くのだと言う
FMからは知らない国の民謡が
枕元からは虚ろな正気が
連なった屋台の香りのように流れている
寝ぼけ眼の弟はこれからおしっこに行くのだ
と言った
数珠のような夜だ
音も無く降りしきる黒いシャワーのなかでは
浅く照り返す窓に焼き付いた僕の怪物が
火傷することを畏怖する前に
生と言う概念はパントマイムに思えて仕方がない
見惚れるほどの深爪で
名を棄てた粒子を掻きこむようにして
木目調の壁に指先が触れたとたんに
時間の許す限り何十万本ものかみの毛が
窪んだ僕のうなじを迂回して
電燈を丸ごと一つ飲み込むようにして
深く
、
突き刺さっているのだ
弟は悪戯を浮かべていた
懐かしいあしもとを握り締め
夜が敷き詰められた部屋の片隅で
見えない壁を汚れた爪で押し返している
取れかかった肩をそっと叩けば
音の無い煩さに呼吸音が鋭さを増した
眠りのさなか布団を掛け直しただけなのに
斜めに傾く柱時計に矛盾の安らぎを感じてしまった
無造作に繋がれた時間帯を
蜂の巣のように淡々と生きている
毎夜うなされる夢を繰り返し
夜の残り香が部屋をさらいに来る
同じ時間、同じ日
汚れた汗を体に許す
ぬぐっても拭ってもそれは、
僕は誰もいない時間を見計らい
僕は水を飲みに階段をそっと駆け下りる。
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選出作品
作品 - 20050609_574_263p
- [佳] Q - he (2005-06)
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Q
he