このままゆらゆらしてたら世界は終わってた
そんなのが最高だって ずっと思ってる
背中に羽根をつけて海を目指す人たちみたいに
むせ返る夏の声と 降り注ぐ蝉の街へ
葉脈をリタリンが駆け抜けていく
鍔迫り合いの痛みが戦場に花を咲かせた
玩具のピストルの弾痕からは真っ白の花が咲いて
吸い上げる幹に緑の痛みが 濃い果実酒のように
眠れ眠れ 銅のうさぎみたいに
青く燃える海に水銀船が幾何学模様を描いていく
波打ち際に落ちた白いワンピースと
麦わら帽子にすがりついて泳ぐ女の子
夜にしか飛ばない鳥の群れが ビル群に着地していく
赤銅の錆に似た虫たちが 五つの足で涙を塗りつけて
嘘つきの唇から揮発していくアルコールのように
吸い上げる痛みに大樹は朽ちていく
灯し樹の下で 女の子は海を見ながら
ゆっくりブラウスを脱いで それから両手を空に突っ込んだ
麦わら帽子をさらった風は 蔦に捲かれてゆっくり腐っていく
葉脈を駆け巡る音の中 灯し樹の下で
- tomo :
素晴しいです。
いままでのもので一番好きな詩。
言葉のセンスも両立できてリズムも崩さない表現がこの詩に落ち着きをもたらしています。(そっとでなくおおやけにしてしまいました)
特に最終連がすばらしい。 ('05/07/19 09:56:39)
- 丘 光平 :
美しいイメージを保ちながら、幻想的な世界が描かれていて良いと思います。瑞々しい若さや清涼感のある語り、鮮やかに匂い立ってくるように感じます。ただ、その背後に、この作者の、冷静なというか、どこかさめた視線を垣間見るのです。それが、かえって、ただのイメージの連続に堕して終わるといった、作品の劣化作用を防ぐ仕事をしているように思いました。 ('05/07/19 11:53:28 *1)
- 紫名 :
女の子の血潮具合と共に生きるその周囲の世界が、
夏の暑い暑くて堪らない感じが前へ前へでていると想いました。
刹那な夏だ、と感じるモノの外ありません。 ('05/07/19 20:21:16)
- 末上シン :
ケムリさんこんばんは
読んでいて、かっこいい詩だと思いました。
連ごとに、これだけ様々な表現を取り入れているのに
ばらつきがなく、繋がりや流れといったものが自然でした。
全体の統一感や、最後の連の印象深さも素敵です
書き手のリズム感やバランス感覚が優れているのだと思いました。 ('05/07/22 00:25:55)
- 柚木 :
はじめまして。
「キレイ」読んだ瞬間にそう思いました。
流れるような言葉運びとやわらかなイメージに引き込まれました。
>夜にしか飛ばない鳥の群れが ビル群に着地していく
すごく好きな言葉で気に入ってしまいました。 ('05/07/22 12:32:47)
- ケムリ :
ここ暫く私事がたてこみ、お礼のレスが遅れてしまいました。申し訳ありません。
tomoさん 前回いただいた「宿題」を消化出来たのかな、とか思っています。この詩は丘さんの詩に強い影響を受けているんですが、それが良い効果をもたらしてくれたんだと思っています。
丘さん tomoさんへのレスでも書きましたけれど、この詩は丘さんの詩に本当に強い影響を受けています。僕は勝手に丘さんの詩を「絵画的」と評させてもらっているんですが(ひょっとしたら、失礼かもしれませんけれど)そのエッセンスを自分の詩にも加えて見たかったんです。いつもは壁に向かってぶちまける絵の具を一枚のキャンバスの中に盛り込んでみる、一つの世界にまとめる、というのが今回の課題でした。そういう意味で、この詩は丘さんのおかげで書けたんです。「静物―nature morte―」を読んでいなければ、この詩は書けなかったと思います。 ('05/07/22 16:52:20)
- ケムリ :
紫名さん この詩は元々、私小説として書き始めたものを詩に焼きなおしたものなんです(某所に一度酔った勢いで投稿して、色々な問題に気づいて消したりしました(笑))その小説の出来そのものはあまり良くなかったのですけれど、そのエッセンスはこの詩に強く残っているみたいです。それを感じていただけると、嬉しいです。
末上さん 僕はいつも、枠の無い詩を書こうとして好き勝手な世界に一人で吹っ飛んでいってしまうところがあるんですが、今回の詩を評価していただいて、色々と考えています。暖かい評価ありがとうございます。
柚木さん キレイ、と思っていただけるのは嬉しいです。一枚の絵に、という目標で描いたので、その評価はとてもありがたいです。言葉を切り出して評価してくれるのも嬉しいですね。「ここが読んで欲しい!」って箇所を抜き出して貰えた時の嬉しさは格別です。なんだか、ちょっと喜びすぎちゃってます。 ('05/07/22 17:02:46 *1)
- 榊蔡 :
賞賛にもう一票を加えたい。
まず一連目からして、一見特別なことを言っているようだけれど、これに共感する人は実際には多いのではないかと思う。きっとみんな、勝ちも負けも、引き摺っているものも守っているものも、その全てから解放されるというのならば、そうして終わってしまうことには、弛緩した本当に良い微笑みを浮かべるのだと思う。これは偏見かもしれないが、私は本心からそう思うので、この導入は効果的だと思う。
全体としても、わずか五連の詩のなかで、筋書き的な繋がりを蔑ろにしたイメージの連鎖で、これだけの終始感を与えているのは素晴らしいことだと思う。
葉脈を駆けるのがリタリンから音になってるのも面白い。
形而上学的には、どちらも区別がつかないんじゃないか、とか考えるとなお面白い。
最終連の
>それから両手を空に突っ込んだ
という些か乱暴な言葉遣いで、
本当に美しい光景を焼きつけることに成功している、というのも良い。
なんだかこの詩人の作品は、講評にまで及ばずとも何作か読んでいるつもりなのだけれど、
同調できるときとまるで同調できないときとの落差が激しい。
原因が詩人にあるのか、私にあるのかまでは判断できない。
まあ最後のこれは、蛇足ってことで。 ('05/07/24 20:49:54)
- ケムリ :
榊蔡さん
ありがとうございます。両手を空に「突っ込んだ」が好評価をいただいているようで、一番悩んだ部分が成功していることが嬉しくて仕方ありません。
「翳した」ではありがちですし「突き入れた」でも何かピンと来ないと随分悩んだんです。一番荒っぽい言葉だったので、不安だったんですけれど。
同調については好みの問題と放り出してしまいたいのですけれど、勿論そうはいかないので、色々と考えています。 ('05/07/24 23:39:14)